『見守る』スキル

私は昔から相談を受けることが多かった。と言えば聞こえがいい。だがその実、「代わりにこれをしてほしい」と言われることの方が多かった。単純に相手のもやもやを整理することもあったが。前者のタイプと長くかかわっていても健全な関係は見込めない。今回はそのようなタイプとかかわるうえで、『見守る』というスキルの重要性を書いていく。

 

 

『見守る』とは

『見守る』という姿勢は人とより深くかかわるうえで大切である。ここでいう『見守る』というのは『困っているのにただ眺めている』のではなく、『自分で解決に向かわせる』ということ。釣った魚を与えるのではなく、釣り方を教える。解決のために代わりに何かをすることは本人のためにならず、むしろ本人が新たなことを学ぶ邪魔になる。自分に余裕を作るのもまた『見守る』スキルの効果だ。

 

見守らないことによる不健全な関係

『見守る』ことをせず口出しすると互いの意思を尊重することができない。

相手に考える意思があったとしても、口出しすることで『この人は代わりに決めてくれる、やってくれる』と思われてしまう。あるいは『自分でやっても間違えてしまう』という不安感かしれない。そうなると、その人は困っても解決を人に委ねるようになる。そして、本来は自分で考え決定することについて他人に委ねることで成長の機会を見失ってしまう。

当然ながら、こちらも時間や心の余裕がある時ない時がある。相手に割く余裕がないのに断れない場合、自分のことも相手のこともいっぱいになりどんどん疲弊していく。けれど相手はこちらを『解決してくれる人』と認識しているので決定を求めてくる。あるいは、口出しすることで相手のやる気を削いだり威圧感を与えることもある。

こうして自分で解決できなかったり、互いに疲弊するような不健全な関係ができあがる。

『見守る』ことの本当の効果は『本人に考えさせる』というところにある。本人が自分で調べ考え結論を出す。そこで初めて見守る側は「なるほどね」と整理・助言ができる。

 

安心が最大の力

『見守る』というスキルを持つことでお互いを守ることになる。『見守る』ということは線引き、そして自衛の1つであるからだ。本人がやるべきことと、周りがやるべきことは違う。また、それぞれの限界も違う。そのために、お互いの領域を明確にするのは大切なことである。

相手をのために何かすることが好きだ、という人もいるだろう。そういう人にとって、今回私が示しているやり方はもどかしいものだと思う。だが、助けてはいけないというわけではない。相手を認めたり、相手が次のステップに進めるように選択肢を提案したりするだけでいい。これで相手は安心感を得られるし、安心は最大の力になるからだ。